「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
我が家の猫は室内飼いで、外には出たことがありません。猫がトキソプラズマに感染していなかった場合、外に出なければ感染する可能性は無いのでしょうか? 私は現在妊娠していて、私自身はトキソプラズマに感染していないと言われました。ですが、猫の方の感染は調べていません。妊娠中に感染すると、流産や新生児が水頭症などになる場合があると聞きましたが、生まれた子供が感染すると、どのような危険がありますか? また、子供が何歳くらいまでそういった危険が伴うのでしょうか?
(BOBOさん)
完全室内飼育の猫ちゃんでも、トキソプラズマに感染する可能性があります。感染の機会として考えられるのは、感染している猫科の動物が排泄する糞便中のオーシスト(小さな虫体を含んだ卵のようなもの)を摂取した場合と、感染動物の筋肉などの組織中にいる虫体を摂取した場合です。トキソプラズマはほとんどすべての温血動物に感染しますが、糞便にオーシストを排泄するのは猫科の動物だけです。
よって、猫ちゃんの感染を防ぐためには以下のことに気を付けてください。
●猫に、人用を含む生肉、未殺菌のミルク(特に山羊乳)を与えない。十分加熱した肉であれば食べても良い。
●猫が狩り(鳥類、ネズミ)をするため自由に徘徊させたり、食肉用動物が飼われている建物へ侵入させたりしないようにする。
●他の猫と接触させない、新しい猫を飼わない、飼い主さんが外で野良猫と接触しない。
人間が後天的にトキソプラズマに感染すると、無症状のことが多いのですが、乳幼児や老人、エイズ患者といった免疫能が低い状態にある人は症状が出やすいようです。ですから何歳までは危険、と言うことではなく本人の体調によるところが大きいでしょう。
症状はリンパ節炎や肺炎など特徴的でないものが多く、中には脳炎など重篤なものもあります。お子さんが生まれた後は、家の猫ちゃんからの感染より、むしろ公園の砂場など外にいる猫ちゃんからの感染に気をつけるべきです。
人間の感染を防ぐためには以下のことに気をつけてください。
●生肉を食べない。
●生肉を調理したあとには手とまな板の表面を洗う。
●起源があてにならない飲料水は煮沸する。
●砂場は猫が糞をしないように被いをかける。
●庭の手入れをする際には手袋をつける。
●オーシストで汚染された土との接触を避けるため、野菜を食べる際にはあらかじめ手と野菜を洗う。
●猫のトイレは毎日掃除する(オーシストが感染力をもつようになるまでには最低24時間を必要とする)。
●猫のトイレを熱湯で消毒する。
●妊娠している女性は、糞便中にオーシストを排泄する可能性のある猫とはいかなる場合にも接触しないようにし、また、土や猫のトイレとの接触を避け、生肉を調理したり食べたりしない(65.5℃で調理した肉ではトキソプラズマは死滅する)。
最後に、BOBOさんはトキソプラズマに感染していないという診断を受けたとのことですが、実は、過去(妊娠の6ヵ月以上前)に、トキソプラズマ感染症にかかったことがある場合は、再感染しても問題ないといわれています。人の免疫機構により増殖が抑えられ、血中に虫体が出てこないため、胎児に影響はないのです。むしろ、胎児に問題となる感染は、妊娠中に初めてトキソプラズマ感染症にかかった場合だけです。よってBOBOさんの現在の状況は、感染を避けるために細心の注意を払うべきと言えるでしょう。
(回答:Tokyo Cat Specialists 院長 山本宗伸先生)