「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
うちの猫は野良猫でした。それを保護して動物病院に連れていったのがきっかけで、今はうちで飼っています。病院で予防接種を行ったところ、生後2カ月、しかも猫エイズと診断されました。今は、家で室内飼いにしています。猫エイズは、具体的にどのような症状がおきるのでしょうか。わが家の猫は、鼻水、くしゃみがひどく、少し下痢もあります。これも猫エイズの症状ですか。それとも、風邪などを併発しているのでしょうか。
また、猫エイズの症状として「慢性的に口内炎などが起こる」と聞いたことがありますが、痛くてご飯が食べられなくなったとき、私はどのように対処すればよろしいでしょうか。今は鼻水などだけですんでいますが、これからどのような症状が起こってくるのか心配です。
また、猫エイズにかかると、どのくらい生きることができますか。なるべく長生きさせてあげたいのですが、どのようにすれば長く生きさせてあげることができますか。
(なおこさん)
まず、猫エイズ(猫免疫不全ウィルス感染症)とはFIV(Feline Immunodeficiency Virus:猫免疫不全ウィルス)に感染することで引き起こされる、猫が発熱や歯肉炎、そして腫瘍や免疫不全を起こす感染症です。
生後2カ月で猫エイズと診断されたということですが、おそらく検査キットでエイズウイルスの抗体が陽性になったのではないかと思われます。2カ月齢の子猫の場合、エイズウイルスに感染して、抗体が作られる場合と、親からの移行抗体の影響で検査が陽性になることがあります。そのため、数ヶ月後に再検査をするか、ウイルス自体(抗原)を調べるPCR検査を受けることをお勧めします。6カ月齢を超えてから検査キットで陽性、もしくはPCR検査で陽性であれば、感染していると考えるべきです。
猫エイズには、3つのステージがあり、症状は、
①感染して4~6週間で一過性の発熱、リンパ節の腫れが見られ、
②その後長い潜伏期があり、
③体重減少、口内炎、発熱、リンパ節の腫脹、下痢がみられる可能性があります。
一般的に猫エイズ(FIV)の発症というのは、③のステージのことで、免疫力が低下して、通常ではほとんど症状が出ない病原体に感染(日和見感染)する状態に陥った場合を示します。
ご相談の愛猫は、検査キットの結果でエイズウイルス抗体が陽性だったということで、猫エイズ(FIV)を発症しているわけではありません。
現在、鼻水、くしゃみ、下痢が見られるようですが、猫エイズ以外の風邪のウイルスでも同様の症状がみられます。子猫の場合、体調を崩すと、成猫に比べ、多くの体力を消耗するので、一度動物病院に行かれることをおすすめします。
猫エイズになると口内炎になりやすくなります。口内炎の治療としては抗炎症薬、抗菌薬、口腔内の洗浄、そして抜歯などが挙げられます。いずれも猫エイズウイルスに感染していると、感染していない場合に比べて治療の効果が出にくい傾向にあります。それぞれの治療にメリット、デメリットがありますので、かかりつけの獣医師とよく相談して治療方針を決定してください。
当初、「猫エイズに感染=死」と思われていましたが、潜伏期が長いため、発症せずに長寿をまっとうする猫もいます。ある論文では、猫エイズに感染した猫も、普通の猫と同じ平均寿命だったと報告されています。しかし猫エイズ(FIV)陽性猫は、リンパ腫や歯肉炎などのリスクが高まることも事実であり、ストレスの少ない室内飼いが推奨されます。日頃から健康管理には十分に気をつけてあげましょう。
(回答:Tokyo Cat Specialists 院長 山本宗伸先生)