「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
動物を「病気にさせない」ことに重点を置き、
ウェルネスプログラムを提供する
原宿犬猫クリニックの院長・本間梨絵先生。
心臓の病気を抱える愛猫「タムタム」と暮らす 本間先生は、 ご自宅でどのような猫トイレを 使っているのでしょうか?
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
青山学院大学英米文学科卒業、日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。都内のホテル勤務を経て獣医師になり、日本動物医療センターにて、内科・外科診療を中心に幅広く経験を重ねる。
2020年7月、日本動物医療センターが新しく立ち上げた分院である『原宿犬猫クリニック』院長に就任。
原宿犬猫クリニック
物心ついた時から身近に動物がいる環境で育った私にとって、動物はかけがえのない存在。ホテルマンとして社会人経験をした後、動物に関わる仕事に就きたくて、オーストラリアに渡って動物看護師となり、帰国後、獣医学を学び直しました。
獣医師になって最初に就職したのが、365日24時間体制の「日本動物医療センター」。昼夜を問わない救急の現場で、夜中に藁にもすがる思いで駆け込んで来たり、残念ながら手遅れで間に合わなかったりなど、たくさんの飼い主さんたちの姿を目の当たりにしました。一刻を争う現場ではゆっくりと飼い主さんの話に耳を傾けている時間もなかなか取れなくて、歯がゆい思いをしたことも事実でした。
もう少し早く診断させてもらえていたら…。救急医療に携わっていたからこそ、予防医療の重要性やご家族とじっくり話をしながら動物たちの状態を把握することの大切さを強く感じました。
「もっと気軽に動物病院に足を運んでもらい、何でも相談してほしい」。
そんな時、原宿に新しく分院を立ち上げることになりました。地域の中核をなす本院である「日本動物医療センター」と連携をとり、地域に密着した医療と安心を提供することを目指し、カフェのようにぶらりと立ち寄ってもらえるような温かい雰囲気の病院になるよう心がけました。
なるべくご家族と一緒にいてもらいながら処置や検査ができるよう、病院内はガラス張りになっています。また、奥には窓のないお部屋があり、猫ちゃんに落ち着いて診察を受けてもらえるようにライトを暗めに調整できるなど、随所に猫ちゃんへの心配りを散りばめています。
とは言え、多くの猫ちゃんは動物病院が苦手です。少しでも嫌な思いをすれば、確実に猫ちゃんの“シャーシャーバロメーター”が上がっていきます。動物病院は「病気の治療をする場所」ではありますが、具合が悪くて体がしんどい時に検査や注射などをされれば、猫ちゃんにとって動物病院はますます苦手な場所になってしまいます。
そこで、当院では普段から動物病院に来てもらえるように、病気にさせないためのウェルネスプログラム、予防医学に力を入れています。
「健康にいつまでもかわいらしく」
これは、すべてのご家族が望んでいることですよね。日々のご家庭での健康管理にプラスして、健康なうちに定期的に動物病院に来てもらい、私たち獣医師や動物看護師の目でそのコの様子を観察することで、ちょっとした変化や違和感を早期発見につなげていきたいのです。
そのコの生涯をご家族と一緒に見守らせていただく。そんな想いで、動物たちとご家族の架け橋になれるよう取り組んでいます。
私も自宅に戻れば、皆さんと同じ、猫の一飼い主です。わが家の愛猫「タムタム」は2歳半になる女のコで、子猫の頃に保護猫ボランティアをしている時に出逢い、わが家へ迎え入れました。
先天性の心疾患があり、心臓の専門医の診断では、もって2カ月くらいの命といわれたのですが、今も頑張って毎日猫生を楽しんでいます。このまま1日でも長く一緒に過ごせる日が続き、天寿を全うしてもらいたいと願っています。
獣医師としても飼い主としても、タムタムが改めて気づかせてくれることや発見があります。
私の夫にとって、猫と暮らすのはタムタムが初めて。以前、「タムタムが変な声で鳴きながら床に転がっている。どこか具合が悪くて死んじゃうんじゃないか!」と、夫が慌てて私に連絡してきたことがありましたが、それは発情による行動でした(笑)。
体も小さいタムタムは心臓へのリスクも考慮して避妊手術をしていないのですが、そうか、初めて猫と暮らす人にとってはメスの発情はこんなふうに感じるのかと、夫の反応はとても新鮮でした。
タムタムは動物病院に行くだけでも体に大きな負担がかかるため、病気にさせないために自宅での体調管理が欠かせません。基本は毎日の食事とトイレのチェック。言葉を話せない猫からのSOSはオシッコやウンチに表れることもあるので、トイレ選びは重要です。
我が家では先代の猫の頃からシステムトイレを愛用しています。チップは大粒タイプを使っていて、砂の飛び散りが少ないところや、掃除しやすいところが気に入っています。固まる猫砂を試したこともありますが、砂が猫の爪にこびりついたり、湿ったものがゼリー状になってトイレの横に落ちていたりするのが受け入れ難かったのです。
タムタムはオシッコの回数が極端に少ないのですが、システムトイレならばシートで確認できるので、オシッコの状態や量などが観察しやすいことも愛用している大きなポイントです。
タムタム自身もシステムトイレを気に入っている様子。猫にとって大きなトイレが理想的と言われますが、最近、ワイドサイズのトイレに変えたら、なんだかトイレに行くのが楽しそうで、笑っているようにも感じます。
猫のトイレ行動に関する研究で、以前は滞在時間が長く、しっかりと砂をかくことができるのが猫にとって居心地がよいトイレだと言われていました。けれども、新しい研究では、周囲にばれずに素早くにこっそりと排泄することが猫本来の習性であり、ずっと砂をかいているのは不満があるサインだという報告もあります。
確かにタムタムもワイドサイズのトイレに替えたら、今までよりさっと済ませて出てくるようになり、その後はしゃいでいます。広々とした新しいトイレにすっかりご満悦のようです。
システムトイレは、シートを外して使用すれば、オシッコを液体の状態で直接確認できます。また、通過してもオシッコの成分に影響が出ないチップを選ぶと、動物病院での尿検査に使用できます。
こうした細かいところまで配慮されたトイレがあるのはありがたいです。
猫に快適にトイレを使ってもらうためには置き場所も重要で、猫のプライベート空間を保つことができ、排泄の様子をさりげなく観察できる場所がおすすめ。廊下や玄関先など気温の変化がある場所や人の出入りが激しい場所は避けています。わが家ではリビングの隅の壁際にトイレを置き、タムタムが使っている様子を目の端で観察しています。
トイレへのアクセスのしやすさも大事で、タムタムはウンチ前にハイになり、そのままトイレにダッシュで突進するので、物などにぶつからないよう動線にも気を配っています。
また、2つのトイレを使っていますが、横に並べるのではなくトイレエリアを増やすイメージで、少し離れた場所に置いています。
きれい好きな猫はトイレが汚れているとオシッコやウンチを我慢してしまい、膀胱炎の引き金になることも。排泄物をこまめに取り除くことはもちろん、掃除しやすくて清潔感を保てるトイレを選ぶことも大切です。
タムタムも膀胱炎を経験しているので、トイレの掃除は徹底しています。タムタムはチップの量が少ないほうが好みなので、私は1週間に1回はチップを取り替えて、トイレ自体も毎週洗います。
猫は我慢強くて具合が悪いことを隠そうするため、病気の発見が遅れてしまいがちですが、排泄物はトイレにしっかりと痕跡が残るので隠しようがありません。つまり、オシッコやウンチは、うちのコの今の体調を知らせる手がかりにもなるのです。
毎日のチェックポイントの基本は、色・量・ニオイです。シートを使っていると重さを計ることでオシッコの量を知ることができます。これらのチェックポイントは写真やメモを取って定期的に記録しておくと、変化にも気づきやすくなります。
以上が、愛猫タムタムのために私が実践している猫トイレのこだわりポイントです。皆さんも猫ちゃんに「健康にいつまでもかわいらしく」いてもらうためにも、うちのコのお気に入りの快適トイレ環境を整えてあげてくださいね。