「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
昔から、♪猫はコタツで丸くなる〜と歌われるように、猫は寒さが苦手。冬になると増えたり悪化したりする病気もあり、代表的なものが「泌尿器の病気」「関節炎」「毛球症」「便秘」などです。これらの病気をしっかり予防して、元気に冬を乗り切るための健康習慣のポイントを紹介します。
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
寒い冬は、膀胱炎や膀胱や尿道に結石ができる尿石症など、猫の泌尿器の病気がとても増える季節です。冬こそ、トイレ周りのチェックやケアがとても重要です!
トイレが廊下など寒い場所にあると、猫はトイレを我慢してしまうことがあり、泌尿器の病気の発症や重症化の要因に。猫ちゃんにいつでも快適にトイレを使ってもらうには、冬の寒さや夏の暑さなども考慮した場所に置くことが基本です。
トイレの周りの床が冷たいときにはカーペットを敷くなどの寒さ対策をしましょう。トイレを暖かい場所に移動できればベストですが、敏感な猫では場所が変わったことがストレスとなって、かえって我慢してしまうこともあります。場所を移動する時には、少しずつ暖かい場所へ動かすなど慎重に行いましょう。
もちろん、寒さ対策はトイレに限ったことではありません。日光浴ができる窓辺に猫ベッドを置いているケースは多いものですが、冬の窓辺はけっこう冷えます。窓から猫ベッドを少し離したり、窓ガラスに断熱シートを貼ったりなどの対策をしましょう。
猫が快適に感じる室温は人とほぼ同じで22℃前後といわれていますが、室内の寒暖差も猫の体にストレスを与えます。ストレスは膀胱炎の原因にもなるので、室内の寒暖差がなるべく少なくなるような環境も意識したいもの。
暖房を切って留守番させる場合には、猫が暖かく過ごせる場所を用意しましょう。ペット用の電気アンカやホットカーペットなどの暖房器具もありますが、コードをかじって感電するなどの心配もあるため、飼い主の目が届かない留守中は、電気を使わない湯たんぽなどが安心です。
猫はもともと水をあまり飲まない動物ですが、冬は水を飲む量がさらに減ってオシッコが濃くなってしまいます。水を飲む量が減ると体が水分不足になるため、泌尿器の病気だけでなく便秘の原因にもなります。
冬は猫が水分を摂りやすくなるように意識的に工夫しましょう。冷ましたささみのゆで汁など少し香りのあるものを好んで飲む場合もあります。普段の食事がドライフード中心ならば、ウェットフードをあげることでも水分が補給できます。
また、水飲みの器を変えることで水を飲むようになることも。一般的に、材質はプラスチックより陶器製で、ある程度の高さがあり、ひげが当たらない大きさのものを猫は好む傾向にあります。たまり水が好きだったり、蛇口から出てくる流水が好きだったり、水そのものにこだわりがある猫もいます。
水飲み場へのアクセスも重要で、猫が室内でよく立ち寄る場所に複数箇所、水を置くことで飲むようになることもあります。
猫ちゃんの変化に気づけるように、冬のオシッコチェックも念入りに行いましょう。
冬は寒くて寝ている時間が増え、猫も運動不足になりがちです。運動には筋肉を鍛えるだけでなく、自律神経を整える役割もあります。そのため、運動量が減ると自律神経のはたらきが鈍くなり、膀胱や胃腸の動きも低下することで膀胱炎や便秘になりやすくなります。
また、猫は体がとてもしなやかで高い所にジャンプしたり飛び跳ねたりしているので、一見すると関節の痛みとは無縁に思えます。けれども、実は年齢に関わらず多くの猫が関節炎にかかっていると報告されていて、特に12歳以上の猫の約90%が何かしらの骨関節症を患っていると言われています。猫ちゃんが遊びたがらなくなったり、高い所に登らなくなったら、関節炎のサインかもしれません。
猫は「のび」をすることがストレッチになりますが、冬の猫はいつも以上に丸くなっていてあまりのびをしないので、関節の痛みも出やすくなります。
冬は代謝機能が緩慢になり太りやすい季節でもあります。オモチャなどを使って一緒に遊ぶことで、運動量を増やすようにしましょう。猫が好む遊びは「狩りごっこ」です。猫が獲物にするネズミや鳥などの小動物の動きをイメージしながら、猫じゃらしなどのオモチャを上手に動かして猫の狩猟本能にスイッチを入れることで、走ったりジャンプしたりなど、運動量を増やすことができます。
日頃からたくさん運動をして筋肉がしっかりついていれば、関節を保護して関節炎の予防や発症を遅らせることにもつながります。
また、猫の高い所に登りたいという欲求を満たすためにも、日頃からキャットタワーなど上下運動がいつでもできるよう環境を整えておきましょう。
運動してたくさん体を動かせばのどが乾くので、水を飲む量を増やす効果もあります。運動のあとは水をたっぷり飲めるように用意しておきましょう。
猫には体を舐めて毛づくろい(セルフグルーミング)をする習慣があります。舐めた毛はそのまま飲み込まれ、通常はウンチと一緒に排泄されるか、定期的に吐き出されます。
けれども、大量に飲み込むと胃の中で固まって毛玉(毛球)になり、食欲不振や嘔吐、便秘などの症状が見られる毛球症になることがあります。ひどくなり、毛玉が消化管に詰まって閉塞を起こしてしまった場合、胃や十二指腸の中から毛玉を取り出す手術が必要になることも…。
毛球症は毛が大量に抜ける換毛期に多く見られます。基本的に猫の換毛期は、春先の3月頃と冬が近づく11月頃ですが、室内飼育の猫では冷房や暖房をつけ始める時期にもたくさん毛が抜けます。
冬の猫は寒さから身を守るために、ふわふわのアンダーコート(下毛)が密集した冬毛に生え替わっています。けれども、皮膚を舌で舐めて刺激することは、血行を促して体を温める効果もあり、冬は猫の毛づくろいの回数が増えます。そのため、冬も注意が必要です。毛球症は長毛種に多いことが知られていますが、短毛種にもよく見られます。
こまめにブラッシングして、飲み込む抜け毛の量を少しでも減らしてあげましょう。ブラッシングすることで皮膚も刺激されて血行がよくなり、体を温める効果もあるので一石二鳥です。
自律神経のはたらきによって、寒い時には血管が収縮して手足に回る血流を減少させ、血液を体の中心に集めて体温を維持しようとします。そのため、足先の血行不良が起こり、関節炎が出やすくなったり、悪化したりします。
関節周りの血行をよくするためには、毛並みに沿って体をさする「スリスリマッサージ」が効果的です。手のひらで撫でるようにゆっくりと頭から背中、前足と後ろ足をマッサージしてください。
手足の先や尻尾、お腹を触られることを好まない猫ちゃんもいますので、猫ちゃんが好きな場所から始めましょう。過度に嫌がる場合は何かの痛みや違和感を隠しているサインかもしれませんのでその場合も獣医師に報告しておきましょう。
冬は静電気の季節でもあり、ブラッシングやマッサージをする時に猫に触れようとしてバチッとなると、猫に不快感を与えてしまいます。空気が乾燥していると静電気が起こりやすいので、室内を適度に加湿することで防止効果が期待できます。静電気が起きやすい人は、一度、壁や床などに触って放電してから猫に触れるようにしてみてはいかがでしょうか。
冬はぬくもりが恋しい季節。猫ちゃんも飼い主さんもハッピーな気分でスキンシップを図りながらケアを行い、寒い冬を健康で元気に乗り切りましょう!
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
青山学院大学英米文学科卒業、日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。都内のホテル勤務を経て獣医師になり、日本動物医療センターにて、内科・外科診療を中心に幅広く経験を重ねる。
2020年7月 原宿犬猫クリニック院長に就任。
原宿犬猫クリニック
「病気にさせない」ことを大切にしたウェルネスプログラムを提供する新しい形の動物病院です。