「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
砂漠に生息していたリビアヤマネコをルーツにもつ猫は、比較的暑さに強いと言われていますが、高温多湿の日本の夏となればまた別の話。暑さと湿度で猫も夏バテや脱水を起こし体調をくずすこともあります。梅雨や猛暑、熱帯夜など、暑苦しい夏を健康で快適に過ごすためのポイントを紹介します。
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
夏になると猫が廊下や玄関のたたきで長~く伸びている姿をよく目にします。猫ちゃんにとっての快適を考えて、室内での暑さ対策をしましょう。
エアコンをかけて部屋を涼しくしても、いつの間にか猫ちゃんが別の場所に移動していることがあります。実は猫は冷房の風があまり得意ではないようです。エアコンの設定温度は28℃前後が猫にとっては快適な温度です。
昔から、「涼しい場所は猫に聞け」と言うように、廊下や玄関のたたき、風呂場のタイルの上など、猫は自分好みの涼しく快適な場所を上手に見つけます。エアコンをかけていても部屋のドアは閉めずに、猫ちゃんが自由に移動できるようにしてください。
猫はエアコンの冷風よりも自然の風を好むので、窓を2か所以上開けて風が通り抜けできるようにしましょう。ただし、窓は網戸にして、猫ちゃんが脱走しないように注意してください。
また、猫トイレが直射日光の当たる場所にあると、暑くて行きたがらなくなりますし、熱気でニオイもこもりがちに。トイレ周りも換気や風の通りが大切です。トイレは季節を問わず快適に利用できる場所に設置しましょう。
室内の温度や湿度、日当たりは時間帯によって変化するので、留守中も猫ちゃんが自由に移動できるようにしておくことがとても重要です。室温が30℃を超える日は、室内でも熱中症を起こす可能性があるので、エアコンをつけて外出しましょう。遠隔でエアコン操作ができるデバイスもあるので、留守がちなご家庭では活用してみてはいかがでしょうか。
ただし、もしも停電や故障などでエアコンが停止するとサウナ状態になって危険なので、脱走防止や防犯の対策も行いながら留守中も窓を少し開け、風の通り道を確保するのがおすすめです。
猫は犬に比べると熱中症になりにくいと言われますが、肥満の猫ちゃん、長毛種、脱水が起こりやすい高齢の猫ちゃんは注意が必要です。「口を開けてハアハアと荒い呼吸をしている(パンティング)」「口や目の粘膜、耳がいつもより赤い」などの症状が見られたら、初期の熱中症の疑いがあります。
放っておくとあっという間に重症化するので、とにかく涼しい場所に移動させて体を冷やす応急処置を行います。急激に体温を下げることで血液の循環にも急激な変動が起こり、別の症状を併発してしまうこともあるため注意しながら、霧吹きで体に水を吹きかけたり、濡れたタオルで体を包んだりしながら、動物病院に連絡をして指示を仰ぎましょう。
じめじめとした夏は、細菌やカビが増殖したり、ノミやマダニ、蚊などの活動が活発になったりすることで皮膚トラブルも増えます。
カビ(真菌)が原因となる「真菌症(皮膚糸状菌症)」は、皮膚に円形にハゲができて広がるのが特徴です。完治までに数カ月かかることもあるしつこい感染症で、人にうつることもあります。
また、真菌の一種、クリプトコッカスを吸い込むと、「クリプトコッカス症」という呼吸器の病気を発症することも。真菌はどこにでも存在するようなカビですが、子猫や免疫力が低下している猫ちゃんでは発症しやすくなります。
真菌はエアコンの内部で繁殖することが報告されていて、エアコンの風によって室内にまき散らされている可能性もあります。エアコンのフィルターや吹き出し口をこまめに掃除して、猫ちゃんを真菌による感染症から守りましょう!
猫がノミに刺されると、激しいかゆみと湿疹、脱毛などが見られる「ノミアレルギー性皮膚炎」が起こることがあります。完全室内飼育でも、飼い主がアウトドアレジャーをしたり外猫と接触することによって、屋外から持ち込む可能性があるので注意してください。
もしも、猫ちゃんの体でノミやマダニを見つけたら、速やかに動物病院で全身チェックをしてもらいましょう。また日頃から月1回のスポットタイプの駆除薬を投与し、寄生虫対策をしておくことが何よりも大切です。
一方、蚊はどこからともなく室内に入り込んできます。耳や鼻先など毛で覆われていない部分を刺されると、「蚊刺咬性過敏症(ぶんしこうせいかびんしょう)」というアレルギー性の皮膚炎を起こすことがあります。また、蚊が運んでくるフィラリア(犬糸状虫)が体内に寄生する「フィラリア症」は犬だけでなく猫でも発症するので、蚊よけ対策も行いましょう。
猫は日なたぼっこが好きですが、紫外線の浴びすぎは「日光過敏症(日光性皮膚炎)」になることがあります。特に白猫などメラニンが少ない猫では、耳先にただれや潰瘍ができ、「扁平上皮がん」の原因の一つになることも知られています。
紫外線は自然光と一緒に窓ガラスやカーテンをすり抜けて室内に入ってくるので、日なたぼっこ好きな白猫がいるご家庭では、窓に紫外線カットフィルムを貼るなどの対策をしておくと安心です。ペット用の日焼け止めクリームも市販されていて、海外では対策の一つとして注目されています。
皮膚トラブルの予防には、ブラッシングで抜け毛を取り除き、皮膚を清潔に保つことも大切です。長毛種は毛玉ができると皮膚が蒸れて細菌性の皮膚炎を起こしやすくなるので、通気性をよくするためにも、暑さ対策としても、猫ちゃんが嫌がらなければ、短くサマーカットにするのもおすすめです。
食べ物が傷みやすい夏は人では食中毒が増える季節ですが、傷んだフードを食べれば猫も体調不良になります。猫はちょこちょこ食べるケースも多いので「置きエサ」にしがちですが、夏のこの時期に、食事の与え方を見直してみませんか?
ウェットフードは傷みやすいので、目安として30分程度様子を見て、食べ残している場合は片づけて処分しましょう。ドライフードはウェットに比べて傷みにくいものの、空気に触れれば酸化して風味が落ちますし、唾液がつけば雑菌も繁殖します。
置きエサの場合も減った分だけフードを継ぎ足していくのはNG。最低でも1日に1回はすべて新しいものに入れ替えてください。また、フードボウルや水入れもしっかり洗い、きれいに拭いて乾燥させることもお忘れなく!
とはいえ、毎回、食べ残しを捨てるのはもったいないもの。そこで、ちょこちょこ食べをする猫ちゃんには、一度に食べ切れる量ずつ、回数を増やして与えることで食べ残しを減らすことができます。留守番をさせる時には、自動給餌器を活用して与えるのもよいでしょう。
また、猫の食欲はもともと食べたり食べなかったりのムラが見られますが、夏バテで食欲が落ちることもあります。あわせて、元気がない、嘔吐などが見られたら夏バテかもしれないので、動物病院に相談しましょう。
開封したウェットフードは密閉容器に移して冷蔵庫に入れ、その日のうちに食べきりましょう。ドライフードも開封後は空気に触れないように密閉容器に入れて保管します。ジッパー付き包装ならばしっかりと封を閉じ、さらにジッパー袋に入れるなど2重にすれば万全です。
未開封のフードは直射日光、高温多湿の場所を避けて風通しの良い場所に保管します。ドライフードを冷蔵庫で保管するのは、冷蔵庫から出し入れする時の温度差で結露が生じ、カビが発生しやすくなるのでおすすめしません。フードには賞味期限もあるので、パッケージをしっかり確認しましょう。
夏は脱水にも注意が必要です。特に、高齢になると体の水分量が減っているのに、乾きを感じにくくなって飲水量が減るため、気づいた時にはかなり脱水していることがあります。皮膚をつまんで元の状態に戻るまでに2秒以上かかる時は脱水の疑いが。脱水すれば尿量が減ったり、オシッコが濃くなったりすることもあるので、トイレもチェックしましょう。
夏も猫ちゃんがたっぷり水を飲めるように用意してください。水の温度は好みにもよりますが、日当たりのよい場所に水を置くと温まってぬるま湯になってしまうことがあるため、置き場所にも気を配りましょう。ウェットフードや液状おやつなどからも水分補給ができるので、猫ちゃんが水分をしっかり摂れるように意識して工夫しましょう。
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
青山学院大学英米文学科卒業、日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。都内のホテル勤務を経て獣医師になり、日本動物医療センターにて、内科・外科診療を中心に幅広く経験を重ねる。
2020年7月 原宿犬猫クリニック院長に就任。
原宿犬猫クリニック
「病気にさせない」ことを大切にしたウェルネスプログラムを提供する新しい形の動物病院です。