「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業は、2024年6月より花王株式会社からエステー株式会社に事業譲渡されました。
春はなにかと変化の多い季節。気温や気圧の変化、飼い主の生活環境の変化が、時には猫にとって大きなストレスになり、体調をくずすことがあります。また、暖かくなってくると寄生虫による感染症なども増えてきます。季節の変わり目の春を猫に元気に過ごしてもらうためのポイントを紹介します。
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
寒暖差や気圧の変動によって自律神経のバランスが乱れ、猫は体調をくずしがちになります。また、春は出会いと別れの季節でもあり、家族の生活環境の変化やイベントで家の中がざわついていることを猫は敏感に感じ取り、それがストレスとなって免疫力が下がってしまうこともあります。
自律神経のバランスが乱れると、血圧の上昇、心拍数の増加、めまい、慢性の痛みの悪化などを引き起こします。猫はただでさえ我慢強くて不調を隠そうとする動物なので、体の中で起こっているこうした症状に気づくことは難しいかもしれませんが、寝ている時間に変化はないか、やたらと鳴いてはいないか、食欲が落ちていないかなど、いつも以上に猫ちゃんの様子・行動をしっかり観察しましょう。
進学や就職による家族の旅立ち、外出や帰宅時間の変化など、春の新生活によってどうしても避けられない飼い主の環境の変化はありますが、家庭内での変化に猫ちゃんが大きな影響を受けているということを意識して、飼い主自身が生活のリズムを整えることも大切です。
また、たくさん遊んだりスキンシップを図ったり、猫ちゃんのストレスを少しでも軽減するために、コミュニケーションの時間をたっぷりと作りましょう。
猫は泌尿器の病気が多い動物ですが、その一つ、「特発性膀胱炎」は尿路結石や尿路感染などの臨床所見がみられないにもかかわらず、血尿や頻尿、粗相など、膀胱炎の症状が現れます。
特発性膀胱炎の原因は不明ですが、ストレスが大きく関与していると言われ、治っても再発しやすいので、過去に膀胱炎を起こしたことのある猫ちゃんは要注意!オシッコの量や回数、色などをしっかりチェックし、トイレをいつも清潔にして快適な環境を整えましょう。
避妊去勢手術をしていない猫にとって春は恋の季節で、異性のフェロモンに引きつけられて家から脱走するトラブルも増えます。暖かくなって窓を開ける機会も増えることから、窓からの脱走や落下事故にはくれぐれもご用心。網戸がはずれたり壊れたりしていないかをしっかり確認してください。
発情は生理反応なので、性ホルモンがさかんに分泌している限り、気分がそわそわして落ち着かなくなることを抑えることはできません。そして、恋の季節が来てもその想いを達成できないまま、室内で悶々としている状態は猫にとっては大きなストレスになります。繁殖の予定がない場合は避妊去勢手術をおすすめします。
春は偶然の出会いから子猫を保護したり新たに家族として迎えたりするケースも増えます。家族が増えるのは飼い主にとっては楽しいことですが、先住猫にとっては環境が大きく変化することになり、猫の性格にもよりますが大きなダメージを受けることもあります。
どんな猫ちゃんを迎えるかというマッチングと猫同士の相性がとても重要です。できればトライアル期間を設け、様子を見ながら迎え入れるかどうかを慎重に決めたいもの。迎えるときも少しずつ距離を縮めて慣らしていきます。
新たに迎えるのが子猫の場合、いろいろな世話が必要となるため時間が取られがちになりますが、まずは先住猫のことを考えてあげましょう。自分のテリトリーに変化が起こったのですから、大きなストレスを感じるのは新入りよりも先住猫のほうです。
特にひとりっコから多頭飼育になったときには、先住猫が体調をくずしてしまうこともあります。声をかけるのもスキンシップも、ごはんをあげるのも先住猫を優先して、しっかり寄り添いましょう。
多頭飼育では頭数が増えるほど1頭1頭の健康管理が難しくなります。食事については、部屋を分ける、食べているところを観察することなどで管理することができますが、難しいのはトイレでの健康管理です。
猫トイレの数は頭数+1が理想ですが、複数個あっても自分専用のトイレを決めて使ってくれるわけではないので、それぞれの排泄物の状態や回数はどうしても確認しにくくなります。
けれども、「このコはこっちのトイレが好き」「トイレのこの部分でオシッコをする」など使い方にも個性が出るものなので、よく観察してそれぞれの行動パターンを把握してください。トイレの前にカメラを設置して観察するのもよいでしょう。
複数の猫が使用する多頭飼育のトイレは、こまめに掃除して清潔に保つことも重要です。掃除と健康管理がしやすいトイレを選びましょう。
気温が上がって暖かくなってくると、植物はぐんぐん成長し、生きものたちも活発に動き出しますが、この頃は寄生虫による感染症が増える時期でもあります。また、スギやヒノキなど植物の花粉が飛び始めると、人と同様に花粉症にかかる猫もいます。
春はノミやマダニなどの外部寄生虫も活動を開始する時期で、そろそろ蚊の姿も見かけるようになります。犬では春先からフィラリア症の予防が本格的に始まりますが、近年では猫も予防が推奨されています。
フィラリア症は蚊が運び屋となるフィラリア(犬糸状虫)という寄生虫によって引き起こされる感染症で、「犬糸状虫症」とも呼ばれます。名前に「犬」とつくようにフィラリアが一番好んで寄生する動物は犬ですが、猫にも感染します。
フィラリアの幼虫を体内にもつ蚊に刺されることによって猫の体内に侵入し、成長した成虫が肺や心臓の血管に寄生することで発症します。咳や苦しそうな呼吸などの症状がみられ、稀ではありますが突然死を引き起こすこともあります。
猫の発症率は犬ほど多くはないものの、猫のフィラリア症は検査では発見しにくいために診断が難しく、現時点ではよりよい治療法は確立されていないので、猫にとってはとても厄介な病気です。
また、完全室内飼育でも蚊に刺されることを完全に防ぐのは難しく、フィラリアに感染した猫の4割近くが室内飼育だったという報告もあります。
けれども、近年では猫用のフィラリア症予防薬が発売されています。猫では首の後ろにつけるスポットタイプを、春先から冬に突入するまでの期間に毎月1回投与するのが一般的で、この方法で簡単に予防できます。猫ちゃんをフィラリア症から守る最も有効な対策は予防することです!
猫にもスギやヒノキなどによる花粉症がみられます。空中を舞っている花粉を吸い込んだり、毛づくろいで舐めた花粉が体内に入ったりすることで体内に花粉が蓄積されてアレルギー反応が起こります。
春先に、目やに、クシャミ、鼻水、おなかをこわす、体をかゆがる、脱毛するなどの症状が現れる場合は花粉症の可能性があります。飼い主が外出から帰宅したときや、窓を開けて空気が動いたときなどにクシャミが出るときは、動物病院で相談してみましょう。
「猫風邪」にかかったことがある猫ちゃんや普段からおなかが弱い猫ちゃんは、アレルギー症状が悪化しやすいので特に注意が必要です。
猫の花粉症対策は、基本的には人の対策と同じで、花粉を室内に持ち込まないことです。飼い主が外から持ち込むことが多いので、花粉がつきにくい素材の洋服を着たり、玄関に入る前に洋服やバッグなどについた花粉を払い落としたりしましょう。
また、床をフローリング用ウェットシートで掃除したり、空気清浄機を用いたりして、室内に舞うのを防ぎます。花粉症は猫にとってもつらいもの。しっかり対策してあげましょう。
【監修獣医師】
原宿犬猫クリニック 院長
本間 梨絵 先生
青山学院大学英米文学科卒業、日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。都内のホテル勤務を経て獣医師になり、日本動物医療センターにて、内科・外科診療を中心に幅広く経験を重ねる。
2020年7月 原宿犬猫クリニック院長に就任。
原宿犬猫クリニック
「病気にさせない」ことを大切にしたウェルネスプログラムを提供する新しい形の動物病院です。